本研究開発は情報処理振興事業協会 (略称 IPA)の独創的先進的情報技術に係わる研究開発事業よりサポートを 受けております。
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近年、コンピュータネットワーク(インターネットや企業内ネットワーク)の
規模は拡大し、ネットワーク利用者は急速に増大している。
また、ネットワークの利用方法も年々高度化して、マルチメディアデータが
ネットワーク上において流通し始めている。
これに伴い、ネットワークを流れるデータ量が大幅に増大している。
このため、ネットワークを介した情報処理の中核となるコンピュータ(サーバ
マシン)への性能要求が増大している。
企業内ネットワークを構築する企業やインターネットプロバイダはこの
要求増大に、高価なサーバ用計算機(専用並列計算機や大型機)を導入することにより
対処している。
既に導入したサーバマシンの処理能力が不足した場合には、さらに高価な
計算機とリプレースする必要に迫られ、リプレース時にはソフトウェア
およびデータを移し換えるために、多大な作業コストが発生する。
本研究においては、これらの状況を大幅に改善するために、サーバマシンを
ワークステーションクラスタによって構築し、その能力を構成マシンの
台数によってスケーラブルに変更可能にするための基本ソフトウェア群を
研究開発する。
本研究開発の大局的目的は前記研究背景で示されるように、サーバ計算機の 大幅なコストパフォーマンスの改善と処理能力にスケーラビリティを与えることで ある。 本目標を達成するためには下記 4 項目の達成を含めた基本ソフトウェア群の 再構築が必要である:
メモリベース通信ファシリティ(MBCF: Memory-Based Communication Facilities)は、 独創的先進的情報技術に係わる研究開発事業のテーマの一つとして平成 6 年度から 約 4 年間研究開発を行った「汎用超並列オペレーティングシステムカーネル SSS-CORE の研究」において、 開発された新しい通信方式である。 MBCF は特殊なハードウェアをまったく必要とせず、通常の LAN に接続可能な コンピュータに保護され仮想化された高速な通信および同期手段を提供する。 現在事実上標準となっている TCP/IP プロトコルと比べて、オーバヘッドコストを 二桁、レイテンシ(通信遅れ)を一桁改善することができる。 この MBCF 方式をクライアントとして使われる可能性のある様々なマシンや オペレーティングシステムに移植する。 MBCF プロトコルによって通信することにより、サーバに掛かる通信のための オーバヘッドを大幅に削減することができる。
サーバマシンは大量のデータおよびプログラムをファイルシステムに保持管理する 必要があり、ファイルシステムの性能がシステム全体の性能のボトルネックとなる 可能性がある。 このため、メモリ管理システムと統合された高性能ファイルシステムを サーバマシンに提供する。 また、本研究において開発するサーバ用オペレーティングシステムが提供する 共有メモリ機能と共有ファイルシステムを統合して、メモリ資源の有効活用と ファイルシステムの高性能化を目指す。
本研究において、サーバ用スケーラブルオペレーティングシステムを 独自開発するため、サーバ用アプリケーションプログラムを確保する 必要がある。 並列化が必要な負荷の重いアプリケーションは並列処理可能な形に変更する 必要がある。 しかし、負荷の軽いアプリケーションまですべて新しいオペレーティングシステムに 移植したのでは、移植のコストが大きくなってしまう。 このため、プラットフォーム依存性がなく、アプリケーション開発言語として 注目されている Java 言語の実行環境を 構築する。 この Java 言語実行環境自体もシステムの高速通信機構やスケーラビリティの 恩恵を享受できるように、分散並列拡張を行う。
独創的先進的情報技術に係わる研究開発事業のテーマ「汎用超並列 オペレーティングシステムカーネル SSS-CORE の 研究」として、平成 6 年度から約 4 年間研究開発を行った SSS-CORE オペレーティングシステムをスケーラブル サーバ用オペレーティングシステムとして機能強化と最新鋭ワークステーションへの 移植を行う。 機能強化の内容としては以下の項目が挙げられる。
本研究プロジェクトで研究・開発するスケーラブルな分散サーバ環境は、 研究目標に示した 4 項目の実現を含むサーバ用 ワークステーションクラスタシステムおよびクライアントマシン用の基本 ソフトウェア群である。 本スケーラブルな分散サーバ環境の研究開発の目標を以下に列挙する。
以下で、これまでの研究開発によって得られた成果について述べる。
本研究は汎用スケーラブルオペレーティングシステム
SSS-CORE の研究開発と関連する部分が多い。
このため、ここではオペレーティングシステムの機能に関する技術的詳細は
省略する。
適宜 SSS-CORE の
ページを参照されたい。
近年、大規模なアプリケーションサーバではマシンクラスタが用いられ、 クラスタ内の負荷分散やノード間の高速通信が重要となってきている。 従って、汎用スケーラブルオペレーティングシステム SSS-CORE の持つ高度な負荷分散機能や MBCF 通信機能は大規模アプリケーションサーバにおいても有効であると考えられる。 一方、アプリケーションサーバ分野では近年 Java の利用が急速に拡大してきており、 SSS-CORE 上でも Java を利用できるようにする 必要がある。 本研究ではフリーの Java バーチャルマシンである Kaffe を SSS-CORE 上に移植し、安定動作可能にした。 さらに MBCF 通信機能を Java プログラムから利用可能にする MBCF-Java ライブラリを開発した。
MBCF を使用可能なプラットフォームを拡大するために、Pentium プロセッサ等の x86 プロセッサを持つ IBM-PC 互換機を対象とする Linux 版 MBCF プロトコルスタック (MBCF/Linux)の開発を行った。 過去に UltraSPARC プロセッサを搭載したワークステーション上の Linux を 開発対象とした MBCF プロトタイプを開発したが、機能並びにプロトコルが 不完全だったため、Linux への移植ノウハウのみを引き継ぎ、新たに SSS-CORE の MBCF プロトコルスタックを PC 上の Linux に移植した。 SSS-CORE の MBCF ルーチンを移植したため、 各種の高機能コマンドも Linux 版 MBCF によって使用可能となった。 また、Linux 版 MBCF は Linux のメモリスワップアウトに対応するコードに なっており、仮想記憶によって実メモリに割り当てられていないメモリ空間へも 自由に MBCF でアクセスが可能である。